夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


「ちょっと、ソウくん危ないよ」

「すいません」


言葉と裏腹に全く謝罪が感じられない声に、藤井は肩をすくめた。


「でもさ~。
 碧ちゃん彼氏、できたのかな。
 最近、特に綺麗になっちゃって」


思わず藤井をガン見したら、目があった。


ふいっとそらせる。


「へえー」

「碧ちゃんに聞いたら、いませんよっていうんだよね」


ほら、いないじゃないか。


「誰か紹介してくださいって頼まれちゃった」


ゼムクリップの箱を投げ入れたら、ザザーッと段ボール箱の中で崩壊する音がした。


「あ~あ。
 ダメじゃん、ソウくん」


ウザい、この先輩。


しょうがないなあ、と呟きながら藤井は宗雅が詰めた文房具を取り出し、ゼムクリップを集め出す。
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