夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


「買い物ですか?」


碧の表情が微妙に動いた。


「いえ、美術展を見に」


きっぱりとした声に変わり、自分の向かいの席に置いてある図録に視線をやった。


宗雅が勤めている商社のグループが持っている美術館。


昔の建物を改造していることもあって人気だ。


碧が宗雅の質問を切り替えす勢いに拒絶を感じ、宗雅は言葉に詰まった。


「琳派ですか。
 どうでした?」


碧が少し首を傾げて伺うような表情で見上げる。


「事務室から見える桜、琳派の屏風絵のようですよね。
 今年も、綺麗でした?」


碧の表情が愕然としたようになる。
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