夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「元彼女さん、いずらくなっちゃったんじゃないですか?」
佐野が碧のいたテーブルを見て言う。
プレートのパスタは、ほとんど手をつけられずに残っていた。
「瀬戸内さんー、もしかして穏便に別れなかったとか??」
上原がふざけて意地悪い調子で聞くと、瀬戸内の目が若干泳いだ。
「そんなことないよ」
「え~。
怪しい」
会話の内容に宗雅は気分が悪くなり、目が付いた物を取りに立ち上がった。
碧の座っていたお向かいの席に、美術展の図録が置いたままなのだ。
よっぽど慌てて退席したのだろう。
「忘れ物ですか?」
佐野が小首をかしげる。
「うん。
所属の職場名を知っているので、送っておく」
「なら、俺が」
瀬戸内が言いかけたのを宗雅が目で刺した。