夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


    *


「ここまできて、寿司?」


忘れられない声が背後でした。


碧は恐る恐る振り返る。


ジーパンにシャツというラフな姿をした宗雅が、からかうような微笑を浮かべていた。


「内藤さんだって」


思わず反論する。


「おれはここ在住だし。
 旅行、でしょ?」


上から下まで視線でなめられ、思わず顔を赤くする。


「だって・・」


言葉の最後は口の中に消える。


「なに?」

「夜のレストランに一人で入るのは、気が引けるので」


そっけなく告げてショーケースに向き直った。

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