夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
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あれ、この図録。
碧はずりずりっと、積んである本の下から引きずり出した。
ページをたぐっていると、宗雅がマグカップを両手に持って入ってきた。
一つをローテーブルに置く。
「あ、それ碧さんの」
さらっと言われて見上げる。
「あの時、カフェに忘れて行ったでしょ。
預かってた。
持って帰っていいよ」
「はあ」
カフェを出た後に気がついたがすぐには戻りづらく、宗雅たちの昼休みが終わったのを見計らって戻った。
こういう物が無くなるとは思わなかったので、強烈にがっくりきたのだ。
買いなおすのも金額を考えるとためらわれて、結局、手ぶらで帰った。
あの日は本当に散々だった。