夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
宗雅はフォークを手に取って、ハムエッグを突き刺す。
何気ない様子を貫く。
「両親には伝えて、その上で婚姻届の保証人の欄にサインして送ってきたんだから、心配する必要ないよ」
「そう、ですか」
まだ不安そうな顔で黙ったまま、宗雅がハムエッグを平らげているのを見つめている。
「碧さん。
言わないと」
宗雅は待ちの姿勢をとっていたが、結局、促した。
碧は少しばつが悪そうな顔をしてから、真剣な顔になった。
「ご両親、色々とお相手にご希望があったと思うのですが」
宗雅はコーヒーカップに口をつける。
「ああ、なんか前に“大切にしたいと思う人ならいい”とか母は言ってたな。
だから文句ないんじゃない?」
碧が攻めるように上目づかいで睨むのに、ため息をついてコーヒーカップを置いた。
とりあえず、当たり障りなく、ざっくりと言っておくことにする。