夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


ああ、やっぱり逃げまくっているわけにはいかない。


引き出しからスマホを取り出すと、もう一度アプリを起動した。


「ん、はよ」


画面が揺れて、目を覚ましたばかりの宗雅が写る。


寝癖で髪があちこちクルンと跳ね、半目だ。


なんだか退廃的な雰囲気で色っぽい。


抱きつきたくなるが、残念なことに、距離がありすぎた。


「おはよう、ございます」


こっちは夕方だが、碧は軽く頭を下げた。


「出した?」


いつもの二言目だ。


碧は言葉に詰まる。


「まだ、出してないの?
 珍しく、碧さんからの電話だから、提出しましたっていう報告かと思った」


宗雅はあくびをかみ殺す。


まだ碧は婚姻届を出していなかった。
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