夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
Spin off
*
「ソウ。
結構、わがままでしょ」
彼女は黒目がちの目で、心を見透かすようにじっと見つめる。
碧は言葉に詰まった。
彼女の言葉は、碧の奥底に押し込めているものを、巻き上げた。
視線を外すと彼女は抱えていた足の膝に顎を載せた。
ウェーブがかった茶色の髪が、きらりと照明で光った。
なめらかな肌に長い睫の影が落ちる。
その姿は、学生の頃に見た雑誌のページ、そのものだった。
直に会うと、周りの空気がきらきらしている。
彼女は、自分よりもずっと長く宗雅と過ごしてきたのだ。
そしてずっとずっと色々なことを知っている。
碧はちりちりとしたものを感じた。