夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


「だから、今、なんていう名字になったのかって」

「あ、でも、また旧姓に戻るかも」

「あっそう。
 この状況を見れば、大方、予想つくけど。
 どうみたって、逃げ出してきたって感じだもんな」

「やっぱりー?」


宗雅はため息をついて頭をかいた。


そして何か言いかけて口をつぐむ。


それは気遣って遠慮しているような感じだった。


「麗華、さ」


宗雅の声をかき消すようにインターホンが鳴った。


「あ、私だと思う。
 悪いんだけど、私の荷物を持ってくるように言ってくれる?」

「おまえ、自分で出ろよ。
 ってか、話し合った方がいいだろ」


彼女はびゅっと片眉を上げた。
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