夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


「い・や・だ」


一語一語区切っていい放った彼女に碧はもっと驚愕した。


すごい度胸。


「麗華」


諭すような声だったが、彼女は眼差しの強さを変えなかった。


「どうぞお帰り下さい、ミスターダバリード。
 後はお互いの弁護士を通しましょう」


彼女はにっこりと笑った。


麗華の言葉に、その場の空気が凍りつく。


それだけでなく、ダバリードと呼ばれた男の出す、人を“負”へ追い落とすような雰囲気が碧の恐怖をあおりたてる。


「ニコラス。
 後で私のパスポートを持ってきて」

「ふぇっ」


後ろに控えていた、クルクルした髪のかわいらしい男が変な声を出して、ミスターダバリードを怖気づいたように伺った。
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