夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「お疲れ様です」
軽く頭を下げて、すれ違って行った。
宗雅が今日のレクチャーの礼をいう暇も無い。
大体において、“あれでわかりましたか?”とか、なんだかんだと理由をつけて女子は接してくるんだけど。
今日のことで彼女のことが少し理解できていた宗雅は、碧らしいと思った。
人見知りするタイプの上、男と接するのにあまり慣れていない。
こちらに対して尻込みしている感じ。
学生の時も、今の会社にも、そういう子はいる。
“世界が違うー”とか思って、遠くから眺めている鑑賞タイプ。
そういう子には、こっちからも無理に距離は詰めない。
ふと説明会の途中でのことを思いだして、宗雅はくちびるを緩めた。
“意識が飛びました”の発言には危うく吹きそうになった。
四角張っているのに、意外なボケを見せるんだもんな。
説明もわかりやすかったし。
あんなに資料を用意することになって、悪かったな。
かなり通常業務で忙しそうだったのに。