夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
3.
*
隣の椅子の背がきしんだ。
ミステリアスな奥さん持ちの藤井が、背もたれに寄りかかり、横目で宗雅を見た。
「おまえの碧ちゃん、残業時間すごいな」
いつの間にか所有格がついているのを、宗雅はスルーした。
「そうですか」
藤井は全部署の業務量と人員配置と業務時間の相関を調べていた。
パソコン画面を見ながら、腕を組む。
「相当な仕事量だからしょうがないけど。
なぜ分担しないかなあ。
これ、提案事項だな」
宗雅は少し眉を寄せた。
「確か、もう二人いるはずですよね?
見たことないですが」
「二人とも病欠らしいよ~。
フォローしないところが凄いけど。
補助金も結構な収入源だろ?
それを可憐な女の子一人に任せるなんて、ひどいよなあ」
可憐?
色々と疑問符のつく会話だ。