夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「しかし色々出てくるな」
後藤は置かれたカップを手に取る。
「放置に放置を重ねているのが、雪崩そうだ」
「雪崩れちゃってから、再始動した方が早そうですね」
宗雅も相槌を打った。
「まあ、でもこれが100年以上続いた伝統なのかもな」
「放置の伝統ですか?」
「いや」
後藤は苦く笑った。
「ぶっ壊しちゃった方が早そうだけど、業務改善プロジェクトがそれをやっちゃあ世話ないしな」
「それも一種の“改善”かもしれませんよ」
宗雅はしれっと答えてから、席に戻った。
なにか問題が起きてから動いたって遅いのだから。
この補助金だって、碧が異動になったらどうするつもりだろう。
異動させられないか。
でなかったら、他の職員と同じように倒れたら?
危惧はしているが、放置なんだろう。