夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「すいません・・」
「いえ、どういたしまして」
呟きがちの礼に、宗雅の方は爽やかに返した。
少しこの人の扱い方がわかってきた。
宗雅は口元を緩めながら入力を開始する。
事務室には碧は一人しかいなかった。
静まり返った中、二人のタイピングの音と紙ずれの音だけが響く。
でも若い女性を一人残しておくって、どうなんだ。
入力していると、いらないことが頭に浮かんでくる。
各門に警備員が立っているとはいえ、別に全員の身分証を確認しているわけでもなく、基本的に出入りが自由だ。
危ないと思うのだが。
不審者が出たって、学内回覧が回っていたばかりじゃないか。
「いつも、こんなですか?」
「こんな・・・。
どんな?」
あなたねえ。
宗雅は思わず顔を上げて、碧をみつめる。