夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
それを見て見ぬふりをして弁当をさっさと食べ終え、入力を再開する。
エネルギーを補給したこともあって、入力は順調に進み、日付が変わる頃には終わった。
「ありがとうございました」
碧が深々と頭を下げる。
「いえ」
宗雅はまくっていたシャツの袖を降ろしながら、時計をちらりと見上げた。
「急げば、終電に間に合うんじゃないですか?」
「そうですね。
施錠しますので、お先に行って下さい」
碧は金庫から鍵束を取り出すと、キャビネの施錠を始めた。
「何か手伝えることありますか?」
「施錠だけなので、大丈夫です」
言葉通り手早く終えて、碧はバッグをデスク下から取り出した。
「閉めます」
「はい」
まっすぐ見つめられ、見つめ返しながら素直に返事をした。