夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
階段を下りて建物の外に出ると、碧は立ち止まって宗雅を見上げた。
「警備室に寄っていきますので」
「はい。
どこです?」
暗に、先に帰っていいことを示した言葉と分かっていながらの返しだ。
碧は戸惑いながら歩き出した。
構内はゴーストタウンの雰囲気だ。
足音が校舎で反響する。
薄暗い中、建物の角を曲がった先に、たった一つ明かりが点っていた。
「置いてきます」
最後の数メートルを碧は走って行く。
別に走らなくてもいいんだけど、律儀だね。
宗雅はくすりと笑った。
やっぱり駆けて戻ってきた後、二人は競歩のように駅を目指す。
無言だ。