夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「どっち方向です?」
「2番線です」
ホームについて聞くと、電光掲示板を確認しながら碧が答えた。
「同じ方向ですね」
宗雅の言葉に少しぎょっとしたらしく、一瞬目を向けた。
碧はそれ以上何も言わなかったし、宗雅も言わなかった。
その中を轟音と共に電車が入ってくる。
予想通りの混雑ぶりだ。
碧は慣れているらしく、いつもの無表情で乗り込んでいく。
この時間帯特有の熱気や匂いに眉一つ動かさない。
慣れてはいても、平気では無いのが、その無表情ぶりで反対にわかる。