夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
4.
*
「橘樹さん」
これはイケメンだな。
声だけで判断し、宗雅が顔を向けると予想通りだった。
茶色のさらさらした長めの前髪。
優しげな顔立ち。
あの俳優に似ている。
「こんにちは、緑川先生」
明らかに棘のある声で碧が答えて、カウンターに歩み寄る。
「科研の出張申請書ですか?」
「ええ。
これでいい?」
「はい。
処理しておきます」
碧は書類をつかむと、自分の席に放って、宗雅との打ち合わせの席に戻ってきた。