夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
2.
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橘樹 碧(たちばな みどり)。
入れそうな大学の学部を受け、落第しないように大学生活を過ごし、なんとなくそのまま大学職員になった。
気がつけば8年目。
ゼミの友達もサークルの友達もほとんどが結婚した。
この2年はラッシュだった。
あの“いかにも”の封書が届くたびに、そこそこ落ち込み、式に出れば、なんとかしないと、と思うのだが。
休みが明けて出勤すると、その気持ちは、ふにゃふにゃと崩れる。
周りを見回して。
大学職員に独身の女子は多い。
若い頃は、いわゆるメーカー勤めの男子よりも給料がもらえるため、夫に合わせる生活を選ばないのだ。
そして年功序列的に給料が上がり、40代になれば都市銀行員並みの給料。
だから結婚している場合、同等の立場を維持できる共働きだ。
ただし、共働きに“協力的”な夫候補を見つけるのは大変。