夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


「おれは無理ですね。
留学したら、やること色々あって、相手にまで気を回せませんから」


藤井はグラスに口をつけて宙を見つめる。


「そういんじゃないんだけどなあ~。
 でもそう言うんだったら、香澄ちゃんは違うんだね。
 まあ、今度、香澄ちゃんから連絡があったら、おれからも言っとくわ」

「ありがとうございます」


藤井の言うことが完全に掴めなかったが、宗雅はうなずいておいた。


「で、ソウの仕事はどうよ」

「だいぶ、わかりましたよ」

「ああ、そう。
 じゃあ、こっち手伝ってもらおうかなあ」

「わかってきただけで、終わってきたじゃありませんよ」

「でも手は空いてきたんだろ?
 関係ある所だからさあ」

「空いてませんって。
 どういうものか、各部から取り纏めの時に携わってみたいですし」

「まじめねえ、ソウくん」

「気色悪い口調で言わないでください」


顔をしかめ、空になったグラスを手にするとカウンターへ立つ。
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