夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
つまり上と下は母親似なのだが、宗雅だけは父親似なのだ。
そのため3人ともそれぞれに、それぞれの意味で可愛がられて育てられた。
息子の内、一番最後が帰宅するまで玄関の明かりは必ず点けられ、帰ってくるとわざわざ起きてきて声をかける。
家に残ったのが宗雅一人となっても、その習慣の変更はなかった。
しばしば帰宅しない、つまりどこかホテルに泊まる日以外は。
ただ自分の帰宅が殆ど深夜を回るのに、宗雅は1階の客間に自室を移した。
寝るまでに自分が物音を立てるのに、既に寝ている両親へ気を遣ってしまうからだ。
玄関ホールの明かりを消して、廊下へと歩き出す。
家は総コンクリートの美術館のような造りだった。