夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


    *


日中の時間、碧は各部の対応に忙しいし、庶務部内の他の目もある。


そのため、部署内のメンバーが帰った頃、宗雅は碧の所に訪れることにした。


一人残って残業している確信はあった。


いつも通り静まり返ったM棟の階段を上がり始める。


「だから!
 放っておいてっ!」


女性の怒りの声と共に階段を駆け下りる足音が響き渡る。


「碧!」


追いかけるような男性の声がして、宗雅は1階の階段途中で固まった。


駆け下りてきた碧の後姿が2階のフロアへ消えていく。


宗雅は顔を引き締めて、ゆっくりと2階まで上がると、さらに階段上を見上げた。


碧を追いかけて、階段を下りかけていた緑川と目が合う。


二人はしばらく無言でみつめあっていたが、緑川はこの間通り少しおかしそうに笑って肩をすくめると、背を向けて


階段を上がりだした。
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