夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「でもお母さんの所に行っても、名字を変える必要はないんじゃないですか?
緑川先生は、一人暮らしを心配して同居を促しているんでしょうから」
「そうなんですけど。
なんか、今更?」
碧が首を傾げる。
「気楽な一人暮らしが慣れてしまうと」
一人暮らしって気楽?
面倒なことばかりと思うけど。
「僕は一人暮らしの経験がないので、わかりませんが。
実家暮らしも上げ膳据え膳でいいですよ」
ちらりと一瞥される。
「この年になると、うるさくなるんです。
結婚、結婚って」
「ああ」
宗雅は腑に落ちて、なんとはなしに碧の横顔を見つめる。