夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「ソウ!」
宗雅は表情を変えずに歩み寄る。
「何?」
「就職活動で近くまで来たから、いるかなって」
香澄は綺麗な微笑を浮かべた。
いわゆるリクルートスーツ姿で、長い髪を一つに結んでいる。
地味に近い姿だが、華がある。
真面目にSPIとかTOEICを勉強すれば、そこそこいい会社に受かるだろうに。
そういう努力は嫌いなタイプだ。
「ああ、そう。
悪いけど、忙しいんだ。
頑張れよ」
宗雅は片手を上げてきびすを返した。
「待って」
背広の裾をつかまれたのに、いらっとする。
「なに?」
声が極端に冷たくなる。
宗雅の視線に香澄は怖気づいた。