夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


「留学のことを考えたら、別れておきたくて。
 悪いけど、香澄とは、留学やその先の事を含めて考えられないから。
 大学生みたいに、ただ付き合うことしか考えられない」


香澄が絶句しているのがわかる。


最初から彼女は結婚を狙っていたプロ彼女だ。


「これ以上時間をかけても、それは変わらない」


香澄の表情が静まり返っていく。


宗雅の気持ちが揺るがないのをやっと悟ったらしい。


無駄なことに時間は割かないタイプだ。


冷めた表情になった。


「わかった」


宗雅は口元の片端で笑った。


香澄だって元々、こっちに対して外見と条件としてしか見ていなかったんだから。


「じゃあな」

「さようなら」


香澄はくるりと背を向けたのに、宗雅も体を返した。
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