白衣の王子に迫られました。

「大丈夫ですか?頭。……残念だけど、逃げられませんよ」

「や、ちょっと待って。ほら、シャワーとか浴びるじゃないこういう時」

 私の知識ではそうだ。でも、世間一般では勢いでなだれ込むのが常らしい。

「そんなのあとでいいですから」

(チッ……やっぱりか)

シャワーを浴びるって事にして、逃げようと思ったのに。

森下君はもう一度私にキスをしながら上着の裾から手を滑り込ませる。

わき腹をなぞられて、そのくすぐったさに思わず身を捩る。

なんだか怖い。

このまま、好きでもない人としてしまって本当にいいのだろうか。

その間も、彼の手はどんどん上に登っていく。

「ねえ、待って!」

森下君は指で、胸の先端を摘まんだ。

「――……あっ、やっ」

私はとっさに彼の左頬を叩いた。

バチンと大きな音がして、私の方が驚いた。

おそらく痛かっただろう。

「あ……ごめ」

「スミマセンデシタ、俺。……帰ります」

森下君はベッドから飛び起きると、カバンを拾い上げて部屋から飛び出していった。


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