白衣の王子に迫られました。
朝の採血結果はまだ出ない。
私は夜勤のナースの富田さんを見付けて声を掛ける。
「おはようございます。なにか変わりありました?」
「おはようございます、穂高先生。特にありませんでしたよ」
富田さんは私と同い年のママさんナース。
旦那さんの両親に子供さんを預けてバリバリ働くキャリアウーマンだ。
私は彼女の生き方を理想としていて、は密かな憧れを抱いている。
「そうでしたか、お疲れ様でした」
「いえいえー、あ。そういえば、聞きましたよ~」
ほくほくの笑顔で何を言うのかと思えば、嘘彼氏の話題だ。
私はがっくりと肩を落とす。
春野さんはいったいどれだけ言いふらしたんだろう。
「……あのですね、富田さん。今後、別れたりとかあるかもしれないし、出来る限り内密に、そっとしておいてくれたら助かります」
「なにいってるんですか! 応援しますから、絶対にその彼とゴールインしてください!」
嘘彼氏との別れをにおわせておきたかった。
でも、富田さんの激励に私は、「頑張ります」だなんてつい口走ってしまう。
救いようのない大馬鹿だ。