白衣の王子に迫られました。

「……千嘉」

「わ、香月君。……なに まだなおんないの?二日酔い」

私は香月君の目の前に腰を下ろすと、ずずっとお茶を啜る。

「二日酔いはよくなったけど、酷いよ」

「酷い?」

 おそらく、私が春野さんに点滴を任せてしまったことを怒っているのだろう。

「ああ、今朝のこと? だって―、春野さんがやるって言い張るから仕方がなかったんだもん!」

「だってーじゃないよ。千嘉が刺してくれるって言うから安心して待ってたのに。僕、彼女にキスされたんだからね」

 危惧していたことが起こるなんて、私は思わず苦笑いしながら確かめる。

「なんで避けなかったの?」

 すると香月君は大きなため息を吐く。

「なんでって、避けられないよ。だって、不意打ちだったんだもん」

 横になって目を瞑っていた香月君に春野さんはいきなりキスをしたそうで、そりゃあ避けられないはずだわと、自分の軽はずみな言動を深く反省する。

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