白衣の王子に迫られました。
「……ごめん。好きでもない人にキスされるのはいやだよね」
「当たり前だよ。それに、女の子となんてしたくないし。……でもどうせ、僕の気持ちなんて千嘉には分からないでしょう。そう言うことは、キスを済ませてからいってよね」
チクリと棘を刺されてしまう。
香月君は私に恋愛経験がないことを知っている。
でもだからって、あんなに嫌味ったらしく言わないで欲しい。
それに、残念ながら私は、もうキスを済ませた。
「分かるよ! 私も森下君に突然キスされたんだから」
思わず、大声でカミングアウト。
ハッとして口を噤んだが、時すでに遅し。
しかも、私の場合、森下君のキスを、少なからず“気持ちいい”だなんて思ってしまったあたり、香月君の気持ちを理解できるとは言い難いのに。
「……え、森下?」
「……あ、いや」
「突然キスされたの? いつ? どこで? 全部白状しなよ。そうしたら春野さんの件、許してあげてもいいよ」
ニッコリとほほ笑む香月君。
私は出来立ての唐揚げ定食をつつきながら、昨夜の出来事を洗いざらい話した。