白衣の王子に迫られました。

「……ごめん。好きでもない人にキスされるのはいやだよね」

「当たり前だよ。それに、女の子となんてしたくないし。……でもどうせ、僕の気持ちなんて千嘉には分からないでしょう。そう言うことは、キスを済ませてからいってよね」

 チクリと棘を刺されてしまう。

香月君は私に恋愛経験がないことを知っている。

でもだからって、あんなに嫌味ったらしく言わないで欲しい。

それに、残念ながら私は、もうキスを済ませた。

「分かるよ! 私も森下君に突然キスされたんだから」

 思わず、大声でカミングアウト。

ハッとして口を噤んだが、時すでに遅し。

しかも、私の場合、森下君のキスを、少なからず“気持ちいい”だなんて思ってしまったあたり、香月君の気持ちを理解できるとは言い難いのに。

「……え、森下?」

「……あ、いや」

「突然キスされたの? いつ? どこで? 全部白状しなよ。そうしたら春野さんの件、許してあげてもいいよ」

ニッコリとほほ笑む香月君。

私は出来立ての唐揚げ定食をつつきながら、昨夜の出来事を洗いざらい話した。

< 28 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop