白衣の王子に迫られました。

「へえ~そんなことがあったんだ。せっかくだし、付き合ってみたらいいじゃん」

 しれっとした表情で、香月君は言った。

「ムリムリ」

「なんで無理なの? まさかこの期に及んで“まずは好きになってから”とか考えてないよね?」

 そのまさかだ。恋愛初心者だからこそ、きちんと段階を踏みたい。そこをすっ飛ばして、誰でもいいから付き合っちゃえ、だなんて思えない。

それに彼は、私の弱みに付け込んであんなことをしてきた男だ。

「……あたりまえじゃない。何が悪いの?」

「悪くはないけど、千嘉、誕生日来たんだよね? 三十路だよね?」

 それをいわれると、取りあえず初彼をゲットしておいた方がいいのかもなんて、思わないでもない。

「それは分かってるけどさ」

でもやはり、誰でもいいとは思えないのだ。

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