白衣の王子に迫られました。

そんなことを考えながらナースステーションへ入ろうとすると、振り向いた森下君と目があってしまう。

(うわっ! どうしよう)

私はとっさに目を逸らし、ナースステーションに逃げこんだ。心臓がバクバクと音を立てる。

「……静まれ心臓!」

隅の方に腰を下ろし、呪文のように唱える。

ただ目が合っただけなのに、動揺しすぎだろう。

私は、適当に開いたカルテ画面を無意味にスクロールする。

そうしながら鼓動が落ち着くのを待った。

それから点滴や薬剤のオーダーを出したり、気になる患者さんのデータを確認して看護師さんに分かるように指示を出し直したり、いつもより五倍速で仕事をこなすと早々に医局へ舞い戻った。

「ああ、疲労困憊」

書類で山積みになったデスクに突っ伏すと、暫く動けなかった。そうこうしているうちに、近々のオペのカンファレンスが始まり、全てが終わるともう午後九時だ。

私は一度病棟へと戻り、担当患者の様子を見てから病院を出た。

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