白衣の王子に迫られました。

「はあ? そんなことしなくていいから、帰って!」

また部屋に入れたりなんてしたら、なにされるか分からない。

森下君に「帰りなさい!」と念を押すと、オートロックを解除してマンションの中へ入った。

彼は部屋の中に入れてもらえない飼い犬のように悲しそうな顔で私をみつめてくる。

(だめだめ、今、少しだけかわいそうだなんて思っちゃったじゃない)

ぶんぶんと頭を振りながらそんな思いをかき消すと、エレベーターに乗り込んだ。

部屋着くと、荷物を降ろしてフウと息をつく。

まずはシャワーを浴びよう。

私はキッチンにある湯沸し器のスイッチを押して、バスルームに向かった。

バスルームとはいっても、小さな浴槽の付いたユニットバス。

たまには温泉なんかでゆっくりと足を伸ばして入りたい。

そんなことを考えながら、熱めのシャワーを浴びた。


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