白衣の王子に迫られました。
「……あ、先生」
「帰れって言ったのに、どうして?」
「だって、どうしても先生にお詫びをしたかったから。それに、終電終わっちゃったし、買い物しすぎてタクシーに乗るお金もないんです」
「知らない!」
……とはいってみたけれど、雨に濡れたままでいたら、低体温症にある可能性だってある。
低体温症と言えば、冬山のイメージがあるけれど、夏でも条件がそろえば起こすのだ。
現に、彼は体を震わせている。きっと寒いんだろう。
このまま始発の動き出す時間までこんな所に放置しておくわけにはいかない。
「……入って」
「え?」
「中、入っていいよ」
森下君の表情がパッと華やぐ。
そんな彼を見て、不覚にもかわいいだなんて思ってしまった自分が嫌になりそうだ。
「いいんですか?」
「仕方ないでしょ! でも、勝手なことしないでよ」
「分かりました! 何をするにでも、先生の指示を仰ぎます」
立ち上がった森下君のお尻には、嬉しそうに揺れるしっぽが見えた気がした。