白衣の王子に迫られました。
「今日は、香月先生のおごりでビアガーデンです!」
キャーと歓声の上がるナースステーション。
午後六時。
同期の香月君がナースの押しに負けて今夜の飲み代を被ることにしたようだ。
率先して出欠確認をしているのはナース四年目の春野さん。
女子力高めの二十五歳。噂によると、院内の男をとっかえひっかえしているらしい。
私には到底真似のできない生き方だ。
そんな彼女は今、香月君を狙っているようだけど、残念ながら彼はゲイで、恋愛対象は男性だ。
その話を知っているのは、院内でもごく限られた人だけ。
香月君いわく、LGBTに対する偏見は根深くて出来る限り秘密にしておきたいらしい。
セクシュアルマイノリティーなんて言われているうちはまだまだ駄目なのだそうだ。
まあ、確かに“少数派”って言ってしまうこと自体が偏見なのだろうけど。