白衣の王子に迫られました。
「好き嫌いはありますか?」
「ううん、何でも食べるけど、本当に作れるの?」
私の問いかけに、森下君は大きく頷いた。
「任せてください。こう見えて一人暮らし歴が長いんで、それなりの物は作れます」
私もひとり暮らしは長いけど、“それなりの物“も作れないし、包丁よりメスのほうが上手く使える。
医者としては問題ないけれど、女性としてはどうなんだろう。
「森下君って、凄いんだね。私家事全般駄目なの……、女失格だわ」
「そんなことありません」
森下君はすぐさま私の言葉を否定する。
「そんなことあるって。こんな私を選んでくれる人なんていないと思う」
へらりと笑って見せると、彼はゆっくり首を横に振った。
「そうやって自分を卑下しないでください。俺は先生が好きです。その気持ちもまるごと否定していることになりますよ」
「……それは」
「それにですね、女性だから家事が出来ないといけないとか、誰が決めたんですか?」
「……え。でも、普通そうじゃない?」
女は家事と育児をする。それが当たり前じゃないか。少なくとも、私の知っている世の中はそうだ。