白衣の王子に迫られました。
「俺はそうは思いませんけどね。人には得手不得手があって当たり前。出来る人がやればいいと思いませんか?」
「……うん。そう、なのかなぁ」
「そうですって。……じゃあ、出来上がるまで待っていて下さい」
森下君はそう言うと、袋の中から中華鍋を取り出した。
「それも買ってきたの?」
「はい。これ、便利なんですよ。鍋としても、フライパンとしても使えるので」
「へえ~。で、何を作ってくれるの?」
「パスタです。色々な食材を買ってきたんですけど、今から飯を炊くのは時間がかかりますし、見た感じ炊飯器もなさそうだし」
「ああ、ないわ」
「やっぱり」
一応一人暮らしを始める時に揃えはしたのだけれど、結局使わなかったので知り合いにあげてしまった。
キッチンにあるのは、冷蔵庫と、電子レンジ、電気ポット、フライパン、果物ナイフと。あとは、食器くらいだ。
それもほとんど使っていないのだけど。