白衣の王子に迫られました。
夕ご飯を食べ終わって、片づけが済んだ頃、洗濯機に入れた森下君の服が渇いた。
「着替えたらタクシーを呼ぶね」
そう声を掛けながら彼の方に目をやると、食品を冷蔵庫にしまっていたはずの森下君がその場にうずくまっている。
「どうかした?」
慌てて駆け寄って彼の顔を覗きこむ。すると森下君はゆっくりと顔を上げた。
「……なんでもありません」
「何でもないって、そんなはずないじゃない」
私は確かめるように彼の額に手をあてる。
「あつい、熱があるじゃない。体も震えてるし、寒い?」
(もう! いつからこんなだったの?)
辛いなら言ってくれてもいいのにと思いながらも、気付けなかった自分に腹を立てる。
「大丈夫ですよ、これくらい」
「そうは見えないけど……」
おそらくもっと熱が上がるだろう。
ひとり暮らしの彼を、このまま家に帰してもいいんだろうか。迷ったのは一瞬で、私は森下君の腕を掴んで立ち上がらせると、ベッドまで引っ張っていった。
「ねて」
「え……」
「いいから」
「こんなのただの風邪ですよ。明日になったら治ります」
「そうだと思うけど、このまま帰すほど鬼じゃないのよ、私は! 明日落ち着いたら始発で帰ればいいじゃない」
でも、森下君の熱は、翌朝になっても下がることはなかった。