白衣の王子に迫られました。
王子の恩返し
森下君の熱は、翌朝になっても下がることはなかった。
「今日は休んだほうがいいと思う」
「いえ、仕事にはいきます」
こんな状態で仕事になるとも思えないし、抵抗力の弱った患者さんと接するのは好ましくない。
それは森下君自身もよくわかっている事だと思うけど、やはり仕事を休むということに抵抗があるのだろう。
それなら、と私は医者としての立場を利用する。
「だめ! 主治医命令」
でも森下君は首を縦には振らない。
「いつから俺の主治医になったんですか?」
「今よ。悪い? 昼までに薬持って戻ってくるから大人しく寝てなさい! このまま仕事に出たらみんなの迷惑になるのは分かるよね?」
私の言葉に森下君はふうと大きく息を吐き出してから、力なく頷く。
「それは……、分かります」
「師長には連絡できる?」
「それくらいはできます」
「じゃあ、決まりね」
「……はい、すみません。ご迷惑おかけします」
少し強引だったかもしれない。
そう思いながら私は、森下君を部屋に残して病院へと向かった。