白衣の王子に迫られました。
「春野さん、確認したいことがあるんだけど、いい?」
「はい、なんでしょうか?」
不機嫌なのは夜勤明けで疲れているからだろうか。
気にはなったけど、私は話を進めた。
「看護記録なんだけど、補液量が100mlになってるけど、これって1000mlの間違えだよね? だってほら、点滴はオーダーした分は全部繋いでるみたいだし、これじゃおかしいなって思ったの」
「……嫌味ですか?」
「え?」
「ただのタイプミスをそんなふうにいわなくてもいいじゃないですか」
春野さんは私を睨みつけると、パソコンの前に座った。
それからバチバチと大きな音を立て乍らキーボードを打ち始めた。
私は慌てて彼女に言葉を掛ける。
「ごめんね、春野さん。そう言うつもりじゃなかったのよ」
でも、まるで聞こえないかのような態度でカルテの修正を終えた春野さんは無言のままナースステーションを出て行ってしまった。