白衣の王子に迫られました。
「ああ、そう言えば昨日の夜中にさ、春野さんに呼び出されたんだよ」
「春野さんに?」
昨日、夜勤だった春野さんは当直だった香月君を階段の踊り場に呼び出したそうだ。
「それで?」
「告白された」
彼女の気持ちは知っていたので、特に驚くことはなかった。
でも、この絶妙なタイミングに一抹の不安がよぎる。
「好きな人がいるからって断わろうとしたら、どんな相手だってしつこくてさ」
「……で、まさか」
「お、察しがいいね! 僕が好きなのは千嘉だって言っておいた」
春野さんがどうしてあんな態度を取ったのか理解すると同時に、私はガックリと肩を落とした。
「よりによって、なんで私なのよ! 撤回してよ」
「撤回なんてムリだよ、そんなことしたら嘘だってばれちゃうだろ。それに、僕が千嘉のことを好きなのは事実だし、千嘉が相手なら春野さんも諦めてくれるはずだよ」
「彼女は、私ごときで諦める子じゃないよ」
「そうかな? だとしても、今のところ他に手がないんだ。だから千嘉、僕を助けると思ってお願いだよ~好きでいるくらい迷惑にはならないだろう?」
そんなことはない。現に、今の彼女は私にライバル心むき出しで、臨戦態勢だ。
でも、懇願する香月君をこれ以上突っぱねることが出来なかった私は、しぶしぶ承諾してしまったのだった。