白衣の王子に迫られました。
「はあ~……」
患者さんを病室に送り届けた後、廊下で大きなため息を吐く。
すると森下君は私の腕をグイッと掴んで、空室に連れ込むとドアを閉めた。
「ちょっと、なに」
「だめですよ、先生がため息なんて。そんな姿患者さんたちには見せられない」
確かにそうだけど、私にだって限界がある。
あんな態度を取られて、ニコニコ笑っていられるわけがない。
「そうだけど」
言いながらまたため息を吐く。
すると森下君は私の頬を左手でむにゅっと掴んだ。
そして半開きになった唇に小さな塊を押し込んだ。
「な、なに?」
「大丈夫、チョコレートです。甘いものでも食べて、リラックスしましょう」
口の中で四角いチョコレートが丸く溶けていく。
それと共に私の苛立った気持ちもほんの少し角が取れた気がした。