白衣の王子に迫られました。

 その日の夕方。

緊急手術が入ってしまったことで、帰宅のタイミングを逃した私は、そのまま病院に泊まることにした。

残念ながら、リクエストしたオムライスにありつくことが出来なくなってしまった。

そんな時たまたまもらったあまりもののお弁当。

それを食べたからか、軽く食あたり気味だ。

朝になると軽く……と思っていた症状は、それは徐々に悪化している気がする。

私は出勤してきた香月君に薬を出してもらうことにした。

「香月君、ちょっといい?」

病棟の空きている個室に香月君を引っ張り込む。

「ごめん、朝一で悪いんだけど薬出してくれない?」

「いいけど。どうした?」

「昨日の夜から吐き気がして、その内お腹も張って痛みが出てって感じかな」

「どれ。じゃあ、そこに寝て」

触診するつもりなんだろう。

他の先生なら全力で拒否するけど、相手が香月君なら全く抵抗がない。

私は素直にベッドに横たわった。

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