白衣の王子に迫られました。

絶体絶命の大ピンチ――と思ったのだけど。

「先生、俺です、森下です!」

「……え、森下?」

私は恐る恐るその顔を仰ぎ見た。

暗がりでよく見えなかったが、確かに外科病棟の看護師、森下友人に間違いはなさそうだ。

彼は、この四月に外科病棟へ異動してきた。それより以前はオペ室にいた。

だから私も彼のことはよく知っている。

確か、今年で四年目。

新人のころから仕事熱心でよく気が利く子だと周囲からの評価も高かった。

それにプラスして、とてもかわいらしい顔立ちをしているので白衣の王子というあだ名がついている。

「なんでいきなり走り出したりしたんですか?」

「てっきり変質者かと思ったの」

「ああ、そうか」

 森下君は「確かにそうですよね」と納得した表情を見せた。

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