キケンなお留守番~オオカミ幼なじみにご用心!~
「すげぇしんどいよな、片想いって。
だから、ごめん…。
気持ちわかるから、ごめん…」
「…蒼くん…」
「ごめんしか言えないけど、ごめん…」
つらそうな蒼の声。
こんな声、聞いたことないってくらい、悲しげな…。
「そんなにごめんばっかり言わないでよ。
蒼くんのイメージが崩れちゃう…」
「…じゃあ、ちょうどよかった。
こんな俺なんか、好きになることないよ」
訪れた沈黙の中に、仲川さんの小さな泣き声が響いた。
それはきっと、失恋の痛みによるものからじゃなくて、
恋をする人だけが流せる、思いやりの涙だ…。
「…嫌い。
あんな女…大嫌い…!」
「そうだな。
嫌いになれれば楽になれるのにな…」
……蒼…。
「でもだめなんだ。
ほんとこれって、病気みたいだよな」
「病気…」
「そ。病気。
仲川はさ、かわいいんだから、次行けよ。
俺みたいに、たちの悪い不治の病に苦しむな」
冗談めいて言う蒼に、仲川さんは涙をこらえた声で、うんとうなづいた。
「…私、蒼くんが、幸せになれるよう祈ってるね」
「ありがとう」
仲川さんの足音が遠のいていった。