キケンなお留守番~オオカミ幼なじみにご用心!~
「ご、ごめん…怒った…?」
「別に」
袖をつかんで見上げる私から、相変わらずの無表情で蒼は視線をそらす。
「…もしかして…怒った…?」
「怒ってねぇよ、別に」
「うそ…怒ってるでしょ?」
「怒ってないって!」
大声を出されて、びくりとなる。
つん
鼻の奥が痛くなるのを感じた。
どうして…って自分でも信じられない。
私、臆病者の他に打たれ弱くもなっちゃったの…?
こんなことくらいで泣きそうになるなんて…。
ニッ
けど、目を見張って涙をこらえる私に、
蒼は口端を上げて笑みを見せた。
「なに泣きそうになってるの?
俺に嫌われたと思った?」
「…!!」
その人の悪そうな笑みに、今までの思わせぶりな無表情はわざとだったと気づく。
「ああでも、おまえ俺に嫌われたくないんだもんな。
言ってたもんな。
えっと、『なにされてもいいから、嫌わないでよ』だっけか?」
「…っ…!」
「かーわーいぃーよなぁあ。
おまえの口からそんな言葉出るなんて思わなかったよ」
ひどい…!
からかうなんて…!
私は本気で嫌われたかと思って…!
「…バカにしないでよっ…!」
思わず振り上げた手は、あっさりと捕まってしまって
ぐい
と引き寄せられる。
キスされる、ってくらい近くまで。
「可愛いよ。
あれ言われた時、俺もう、頭おかしくなるんじゃないかと思った。嬉しくて」
「……」
「今までされた告白で、一番やばかった。
来てくれただけでも嬉しかったのにさ…
すげぇ殺し文句だった」
「……」
「嫌うわけないじゃん。
何年片想いしてきたと思ってんの。
って言うか…。
俺も驚いてるんだけど…」
言いよどむと、蒼はどことなく恥ずかしげな表情を浮かべた。
「蓮のこと、もっと欲しいって思ってるのは本当なんだけど…
一方で『怖い』っても、思ってるんだ」
怖い…?