キケンなお留守番~オオカミ幼なじみにご用心!~



蒼を残して、私は様子をうかがいに行った。



「明姫奈…入るよ…?」



部屋の真ん中で、明姫奈は泣き崩れていた。

鞄は投げ捨てられて、中の小物が散らばっている。



どうしちゃったの…?



気丈な明姫奈のあまりの取り乱しぶりに、掛ける言葉を見つけられなくて、

私は小物を拾い集めることしか出来ない。



けど、拾い集めた小物のひとつを見て固まってしまった。



真四角のパッケージ。

一見お薬みたいだけどこれは…。



「…それ、蓮にあげる。
私はもう別れるから、いらないし」


「こ…これ、もしかして」


「コンドーム。
男と付き合うなら持ってた方がいいよ。
すぐヤリたいって言ってくるから」



あ、明姫奈がこんなのを…!

ピュアな美少女だと思ってたのに…やっぱりこういうの使うこと…してたんだな…。



「い、いけません!!!」



思わずお母さんみたいな口調になる私に、明姫奈はぷっと失笑する。



「もう、蓮は子どもなんだから。
蒼くんにだってすぐねだってくるよ?」



ん…たしかに…って、話を戻さなきゃ…。



「ほんとに別れる気なの…?」


「ん」


「だってまだ好きなんでしょ?
だからそうやって泣いちゃうんでしょ?」


「別れるよ。
今日だって、ろくにデートしないで『ホテル行こう?これからあまり会えなくなるから』って言うし。
ムード無いじゃない。
もっと思い出に残るようなこととか、場所行ったりしたいのに…。
全然、私の気持ちなんか考えてくれないんだもん。
私は…」



ぽたり、と亜希奈の目からまた涙が落ちた。



「私は…不安なの。
遠距離になったら、お互いの気持ちが離れちゃうんじゃないかって。
私、堺くんのこと大好きなのに…」


「じゃあどうして別れるなんて言うの…?」


「だって、言ってくれないんだもん…!
『遠距離が辛くなったらちゃんと言って』とか『もし、おまえの心が変わっても、俺は怒らないよ』とかしか言わないんだもん。
バカじゃないの?変わるわけないじゃない…。

私はそんなことよりも、もっと…」



んんん…その言葉だと、先輩はちゃんと明姫奈のこと大事にしてると思うんだけどなぁ。



もっと?

もっとって、明姫奈はもっと先輩にどういって欲しんだろう…。


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