キケンなお留守番~オオカミ幼なじみにご用心!~
俺は叩くようにボール奪い取った。
パン!と響く乾いた音に、蓮も一瞬口ごもる。
「じゃあ、もし勝ったら、
今日は俺の言うことなんでも聞けよ」
「は、はぁ?」
低く絞り出した声に蓮は戸惑いの表情を見せるも、
すぐに気を取り直して、いつもの勝気な調子で答える。
「ふぅ、わかったわかった。
から揚げでもハンバーグでも、あんたの好きな肉料理にしてあげるって」
「それだけじゃないんだけど」
「わかったって!
なんでも言うこときくわよ。
マッサージでもなんでもしてやればいいんでしょ?
ああもう明姫奈っ。
蒼のやつこんなこと言ってるから、先輩のこと精一杯応援してあげてよ」
「う…うん…」
明姫奈って友達は、なにか感づいているのか…。
冷やかに見下ろす俺と視線を合わせないようにうなづいた。
俺は踵を返すと、ゆっくりとドリブルしながら先輩に対峙した。
「先輩。
今からマジで三本勝負してください」
「どうしたんだ、急に」
と訝しむ口調でいうが、先輩の口元は上がっている。
「俺がヘタレじゃねぇってこと、証明したいんで」
「…いいぞ。
手加減はしないからな」
本気のワンオンワンが始まった―――。