手紙は時を駆け抜けて
今日はいつも以上にろくなことを考えない。
想うのは、全部全部、樹のことばかり。
あの手紙が私をおかしくさせる。
過去を無理矢理引っ張りだされる。
私はなんだか不甲斐無くて、奥歯を噛み締めた。
けれどそんな時、女子たちの浮かれた話声が切り取ったかのように私の耳へ飛び込んできたのだ。
「キャンプファイヤーの夜、ねえ、どうすんのよっ? アイツ、誘うの?」
ぼんやりと見つめた先には、窓際でニタニタして、隣に立つ女子の脇腹を肘でつついている女子。
隣に目を移せば、外のやわらかな光に照らされた薄紅のさす愛らしい頬が見える。
イヤでもありありと思いだすあの手紙の一文。