手紙は時を駆け抜けて


「人と人を結ぶ奇跡が起きる時間なの。どんな不可能なことだって叶う。心の底から思っている人ならば、例えその人がどこにあろうとも会わせてくれる。そういう言い伝えなのよ」

くねくねしていた康太は今や、膝の上でかたく拳を握っていた。

私も唇をきつく結んだ。

言い終えた詩織がこちらを向いて、赤くなった目で微笑むから。

泣きそうな目で笑顔を作っている。

白い光にさらされた瞳は潤んで煌めいている。

これは、恋している報われない瞳だ。

言わずとも、相手なんてひとりしかいない。

私たちの記憶の中で大きく生き続けている彼。

私は喉を鳴らして慌てて飲み込む。

今朝の手紙の話を。

私は俯いて、苦しい胸に強く爪をたてる。


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