手紙は時を駆け抜けて
あんな手紙、きっと偽物なのだから話すべきではない。
そう思うから口に出さないはずなのに、なぜか胸に鉛が入ったみたいに息苦しくなっていく。
座っていることさえももう辛くて、私はつい床へ手をついた。
「あっ! なにやってんだよ!」
康太の叫びではっと目が覚める。
くすんだ茶色の床に広がる淡いピンク色の小さな沼。
床と手の間で紙パックはぺしゃんこ、手はいちごミルクまみれ。
「大変! はやく拭かなきゃ」
「ごめん、あはは。ちょっと寝てたかも?」
「明日香は本当にアホだよな。手がかかるぜ、な、詩織~」
急いで拭いてくれているふたりに、へらへら笑って誤魔化す私はピエロみたいだった。
まだぺしゃんこのまま床に転がっている紙パックのストローからは、いちごミルクの雫が涙みたいに滴り落ちていた。